2.台風は秋分の大潮・満潮に襲来

 3回目の浸水が以下に詳述する13号台風によるもので、昭和28年(1953)9月25日に発生した。神野新田土地改良区には、神野新田土地農業協同組合が記録した「昭和28年9月台風第13号災害記録」(以下「災害記録」と略記)「昭和28年13号台風災害写真」(以下「災害写真」と略記)「神野新田4号堤災害復旧現場日誌」(以下「現場日誌」と略記) その他の記録が保存されている。神野建設株式会社には、二回地区の復旧工事の写真アルバムおよび昭和26年(1951)より昭和31年までの同社諸行事の写真アルバムがあり、その中には13号台風関係の写真がある。また「河合陸郎伝」には「13号台風と陸郎」の一節が設けられ、生々しい記述がある。河合郎は、二回新田に住んで自らも被災し、当時、愛知県会議員として復旧に功績多大であった。

 昭和28年(1953)の13号台風は、9月17日にカロリン群島で発生した。25日午前10時半には愛知県下に暴風警報が発令され、ラジオは海岸地方に高潮の危険を警告し「午後7時15分が満潮時で大潮に当たり、最も南風が強い時期とあたっておりますから、特に警戒を要します。」とくり返し伝えた。 台風は25日午前2時45分頃紀伊半島に上陸、伊勢湾・渥美湾を横断して午後7時10分頃岡崎市附近を通り、中部山岳地帯に去った。 ラジオの警報の通り、この台風が伊勢湾を通過した時刻がちょうど、秋 分大潮の満潮時と一致し、明治22二年(1889)9月11日以来の実に64年ぶりの異常高潮となり、沿岸一帯の堤防を溢流し破壊し、一大惨状を呈する大災害を惹起した。「昭和28年9月25日台風第13号災害原因並びに其の状況」(愛知県)によれば、伊良湖測候所による調査は次の通りであった。

 最低気圧(海面)  957.1ミニバール

 総  雨  量   143.8mm(23日5時より25日21時35分)

 瞬間最大風速 毎秒 39.9m

 また、豊橋港における最高潮位3.363m(既往最大高潮位1.91m)、神野新田事務所の潮位標の最高位は(+)2.89m(午後8時15分)であった。